映画「かもめ食堂」で、中年男がコーヒーを美味しくする“コツ”を教えてくれるシーンがあります。
男はドリップコーヒーの粉の真ん中に指で穴を開け、「コピルワク」と唱えるのです。オマジナイのように。
また映画「最高の人生の見つけ方」で主人公の一人、ジャック・ニコルソン扮する大金持ちが、世界一高いコーヒー、という理由で常飲するコーヒーがコピルワク。
インドネシアのルワク(イタチ)がコピ(コーヒー)の実を食べ、出てきたウンチから採取した実。これがコピルワクの正体です。
イタチの仲間であるマレーシアジャコウネコは樹上で生活していますが、彼らが熟度の高い果実だけを選んで食べるから、美味しいコーヒーができるのだそうです。まさに自然の選果作業です。
完熟チェリー(コーヒー豆は赤く熟すためこのように呼ばれます)は消化器官を通る間に酵素反応を起こし、あたかもジャ香のような特別の苦味と香りが生み出されます。
実際、高価なコーヒーです。
1杯5000円で提供している店もあるとか。100gの相場は3000円~5000円です。普通のコーヒーの3~50倍でしょうか。
これまで2回飲んだことがありました。1度目は那覇市内のコーヒー専門店で。2度目は娘夫婦のバリ島土産で。どちらも、さほど感激しませんでした。2度目は既に粉になっていて、膨らまなかったし・・・。
それでも有名なコーヒーです。
コーヒー豆を大量にお買い上げいただいているお客様に、飲んだことありますかーと伺ったら、「聞いたことあるけど、飲んだことない」。そこで、お客様に飲んでいただきたく、取引のある商社に尋ねたら、「在庫あります」。2013年の春に収穫した豆がちょうど、入荷していました。
即決で頼みました。通常、コーヒーの生豆は20K~60Kの単位で仕入れるのですが、今回の販売単位は1K。それだけ貴重な豆なのでしょう。
1Kのコーヒー豆は、うちの釜では焙煎下限ギリギリの量です。試し焙煎をやらず、焙煎チャンスは1回としました。
慎重に焼きました。
その結果、過去2回の味より、よいものができあがりました。
しっかりした酸。それでいて癖がなく、すっきりした優しい甘みもあります。
しかし、あまりにも仕入れ値が高く、値段を付けて販売するとなると、それなりの価格になります。
分量にも限りがあり、今回は普段よくお買い上げいただいているお客様だけにご提供させていただきました。
飲めなかったお客様、大変申し訳ありません。
いつか、すべてのお客様に飲んでいただくことができるよう、店としての“体力”を付けたいと思っていますので、今回はご容赦願います。